1955(27歳)

「第40回二科展」東京都美術館(東京) 特選
「吸盤」(鉄、吸盤)
鉄板に吸盤がくっつている作品。この頃、空間で「重力子」(中性子のような)によって引き合っているのではないかという、仮説=夢想を抱いていた。後ほど、重力は物質的ではあるが、重力と精神との間のアナロジーから、根源的に「精神子」というものを想定した唯物一元論を構築していくことになる。この観念と現実(=精神と物質)の関わりは、ある角度を持って接している。離脱しているわけではなく、ある一点で必ず接している。その角度に自分が関係する。ものを観測するとは、この角度を測定することではないかと村岡は考える。その角度が大きければ大きいほど、作品としてもうまく成立する。この感覚が、村岡の制作原理になる。角度を探って行く作業。作品制作の根源的なコンセプトになっている。
この観点から村岡は、松澤宥に興味を持つ。村岡は松澤の仕事も、完全に浮遊した平行線ではなく、ある一点で接していると見ている。その一点とは、「声」である。従って、松澤の場合、最も彼の思想を表現しえているのは、パフォーマンスであると村岡は見ている。この問題は非常に重要で、或は、ミニマルアートとコンセプチュアルアートとの接点にもなる。その1つの方法論として、「移相」がある。

「第6回選抜秀作美術展」三越(東京日本橋)
「朝日秀作美術展」伊勢丹(東京新宿)
土方定一が選抜して、「鉄」を出品。